本コミュニティのレビューを拝見して購入致しました。
移動しながら一種密室的な大道具である列車を舞台に怪奇、探検、オカルト、コズミックホラー、推理、スパイと盛り沢山の60-70年代の薫りが色濃い、英国ハマーフィルムやスペインで撮られたAIPのホラー作品等が好きなファンには堪らない作品。
共演が多いカッシングとリーですが、実は共闘する映画はハマーでは無く、反目しながらも事件解決へと最後は協力する様子を観る事が出来る嬉しい作品。
ツーショットが多いので思わず見惚れてしまいます。
リーが一見傲慢に見える英国貴族階級の生身の人物を正面から演じた作品でもあります。
典型的な英国人の二人に対し、脂ぎったテリー・サヴァラスが出演シーンは少ないながらエキセントリックなコサック隊長で強い印象を残します。
スペインやドイツからキャスティングされた美女群も映画に華を添えてくれています。
リーも過去演じた怪僧的人物役でアルベルト・メンドーサが怪演。
それにしてもこれだけの内容を90分以内に詰め込んだ監督と脚本陣も見事な職人芸を見せてくれています。
作中、殆どのショットがミニチュアで撮られたシベリア急行ですが、はっきりそうと解っても「アバランチエキスプレス('79)のミニチュアより良く見えるのはやはり蒸気機関車の所為でしょうか。
ただ、結構意味深げに扱われていた或る物が途中でフェイドアウトしてしまったのは残念。
ペドロスキー伯爵役でアルゼンチン出身の戦前からの息が長い二枚目、ホルヘ・リガウド(ジョルジュ・リゴー。「新荒野の七人」、「盗みのプロ部隊」のダンディな金庫破り役)も出演しているも嬉しい所です。
【特典映像】
1.『シベリア急行殺人事件』エウヘニオ・マルティン監督インタビュー(2011)約14分。
マカロニ・ウェスタン『無頼プロフェッショナル(BAD MAN′S RIVER)』、テリー・サヴァァラス主演版『Pancho Villa』等幅広い作風で知られているマルティン監督のかくしゃくとしたインタビュー。
2.ロケ地ミニ探訪。約1分。マドリッド鉄道博物館。
かつてはアトーチャ中央駅で映画の出発地点、北京の設定でした。
3.オリジナル劇場予告編。2分56秒。結構予告編でネタバレしてしまっているのが解ります。
4.『テリー・サヴァラスと私』作曲家ジョン・カカヴァスインタビュー。8分07秒。
アメリカTV界に偉大な足跡を残し、本作と同年にはハマーフィルム「ドラキュラ‘72」の音楽も担当しているジョン・カカヴァス。
同じギリシャ系のサヴァラスとの関係の深さが述べられています。
5.英語版 OP&ED。3分34秒。
6.ギャラリーアーカイブ。ポスター、プレスシート、シノプシス、そしてスティル、ロビーカード、ソフトのパッケージ。
【封入ブックレット】8頁、カラー。
1.「トランス・シベリアン・エクスプレスの悪夢」ダニエル・アギラル氏(スペイン出身、現日本在住の映画ライター、俳優)。
本作と当時のスペインのホラー事情まで俯瞰した読み応えの有る解説。
本文内で語られている或る有名コズミックホラーSFとの類似は、IMDBのトリビアでははっきり「2度目の映画化」と言い放っており、これはご覧になった皆様のご意見も聴きたい所。
2.「幻の『恐怖列車!シベリア・クロス』と38年目の日本語吹替。」岩本克也氏(スティングレイ代表)。
本作の吹替え版作成の苦労話を岩本氏の少年期の思い出と、本ソフト製作中に亡くなったクリストファー・リー卿への追悼も込めて語ったファンには胸が熱くなる内容。
Blu-Rayの映像は所々フィルムの傷が残っている箇所も御座いますが、発色・細部は標準以上の物。