[1]制作・監督・企画: 若松孝二 脚本: 出口出(足立正生) 撮影: 伊藤英男 音楽: つのだ☆ひろ/陳しんき/石川恵/柳田ひろ 出演: 谷川俊之/江島裕子/寺島幹夫[2]制作・監督・企画: 若松孝二 脚本: 出口出(足立正生) 撮影: 伊藤英男 出演: 秋山未知汚(道男)/笹原茂朱/加賀美妙子/小水一男[3]制作・監督・企画: 若松孝二 制作・企画: 葛井欽士郎 脚本: 出口出(足立正生) 撮影: 伊藤英男 音楽: 山下洋輔トリオ 出演: 吉沢健/横山リエ -- 内容(「CDジャーナル」データベースより)最近、革命幻想が吹き荒れた68年を軸とする60年代から70年代初頭にかけての“変革の時代”をめぐる再評価が盛んだが、その流れだろうか、“性と暴力”をテーマに、あの時代を過激に疾走したピンクの巨匠若松孝二の問題作をまとめたDVDボックスが出た。なかでも『天使の恍惚』は、東京総攻撃を目論む革命組織が、内部の裏切りから自滅の危機にさらされ、個的な爆弾テロを繰り返すという先鋭的なテーマが衝撃を与えた極め付きの問題作だ。冒頭、抽象化されたナイトクラブのステージで、横山リエが歌う「海燕」が流れ出した瞬間、ゾクゾクっとさせられた。大島渚の『新宿泥棒日記』のヒロインでもあった横山リエは、妙に醒めた眼差しが印象的で、あの時代の熱狂と倦怠を一身に体現していた稀有な女優だった。この隠れた名曲は多分CDにもなっていないはずで、当時、TBSの深夜放送『パック・イン・ミュージック』で故林美雄が繰り返しかけていたことが思い出される。久々に見直して、連合赤軍による浅間山荘事件や新宿交番のツリー爆破事件が勃発して、騒然となっていた時代に、こんなラディカルな映画がよくぞ作られたものだと、しばし呆然となる。あの頃の、淀み、閉塞した、不穏な時代そのもの空気感が、切ないほどリアルに画面に封じ込められているのだ。米軍基地から武器を収奪しようとして失明し、ラスト、ボストンバックに爆弾を抱え、新宿の街を彷徨する革命戦士・吉沢健は、まるで迷えるオイディプスのようでもある。 当時の新宿のヒッピー風俗を、アイロニーたっぷりに指弾した『新宿マッド』は珍品といっていいが、日和見の活動家集団を揶揄しながら、“川向こう”に沈潜する孤独なテロリストの不敵な闘いを描いた『性賊/セックスジャック』は紛れもない傑作である。 (高崎俊夫) --- 2005年12月号 -- 内容 (「CDジャーナル・レビュー」より)