2008年リリース。まず、コンロン・ナンカロウ(Conlon Nancarrow、1912年10月27日 - 1997年8月10日)について触れておく必要があるだろう。ナンカロウはアメリカの現代音楽の作曲家なのだが自動ピアノ(Player Piano)のための作品を50曲以上書いていることで有名な人だ。リゲティ・ジェルジュ(リゲティはハンガリー人なので姓名が日本と同じで普通の反対。スタンリー・キューブリックの作品に多くの曲が使われている)に再発見され、『ナンカロウはヴェーベルンやアイヴズに匹敵するほどの大作曲家だ』と高く評価された事で知られている。
そのナンカロウの『伝統』に基づいて作られた自動ピアノのための曲集というのが本作ということになる。当初はパンチングによって演奏されていたが、今ではMIDIを使用した物になっているようで、1927年製のベーゼンドルファーと1925年製のフィッシャーにAmpico Player Piano Mechanismをセットして演奏されている。
そして何と言っても必聴なのは、最後の3曲、マルカンドレ・アムランの作品だ。どれも同じ人類が作曲したとは思えないくらいに凄いのだが、ラストの『サーカス・ギャロップ』が特に凄い。この曲は2台のプレイヤー・ピアノのための作品になっていて、MIDIファイルの制作をキース・カレンバとマルカンドレ・アムラン自身が行っているのも驚きだ。
フツーのプロのピアニストの能力を『5』とするとアムランの場合はその5乗くらいの能力を冗談でなく持っている。未だ聴いて無い方は是非ともこのアルバムだけでも聴いてみることをオススメしたい。