甘めに星4つですが、本当は3.5個ぐらい。暇だったらどうぞ、という程度のお勧め度です。
見る前にあらすじは大体知っていたので、転落モノの後味の悪さを緩和するため、まず最後から三〜四分の一ぐらいのところ(ノラが主人公に弟=主人公の夫=の真実を伝える辺り)から見始め、最後まで見た後、半分ぐらいのところ(主人公の結婚。絶頂から転落に向かうところ)まで戻って最初に見たところまで行き、最後に冒頭から前半部分を見たのだが、これが結構、私には正解だった。
内容とは直接関係ないところからいくと、この見方によって、主人公のやつれた晩年から入ったので、冒頭の女学生時代の初々しさを見て、本当に同じ女優さんなのかと、演技力に衝撃を受けた。イギリスの俳優さんって、若手でも本当に演技力が凄い人が多い。ここまで幅のある演技ができる彼女って一体何歳かと思ったら、当時25歳ぐらいだった。人口は日本の半分ぐらいだが、やっぱりシェークスピアを生み、一時は世界を制した国の実力だね。こんな演技を当たり前のように見せつけられちゃうと、ジャリタレがギャーギャー騒ぐばかりの日本のドラマや映画は見る気も起こらない。
本題です。主人公に共感が持てないという人、それが普通です。もちろん、制作側もそれを狙ってのことでしょう。
しかし、私の感想は、作品の後半に入った辺り(主人公が没落を始める辺り)でシャーロット・ランプリング演じる編集者の妻が言ったのと同様、「好きじゃないけど、どエラい女だ」(実際にはもっと上品な言い方をしていますが)。あの、上流階級が好むべきテイストからは耐えられないような趣味の悪さ、下品さ、過剰さが、逆にノラや編集者等、本物の上流階級の中でもいい人で、なおかつそれなりの生命力や独立心を持った人の度肝を抜き、強烈に惹きつけるのだ
作品としてのレベルや主人公が持つ魅力が全然違うので、ほかの方の一部もそうしておられるよう「風とともに去りぬ」と比較することはあまりしたくはない(当然風ともの方が私の中では断然格上)のですが、確かにその辺は、共通点があります。風ともでは、メラニーがスカーレットを好きだった理由がいまいちピンときませんでしたが、ノラがエンジェルを愛した理由は何となく分かり、風とも理解の一助になりました。本当は編集者妻も主人公が嫌いではなかったと思いますよ(「好き」ではなかったでしょうが)。本物の上流でも根性のある人たちは、ゲテもの(自分たちとは明らかに違った種類の人)だが妙な生命力に溢れた人に対する好奇心や怖いもの見たさが並々ならぬはずですから。
そこへいくと、枯れきったような最期はいただけなかったとも言えますが、彼女の人生には、タチの悪いアシュレイみたいな人はいても、レット・バトラーはいなかったのが最大の敗因でしょう。そんな中で、自分の代表作をボー読みした演技の感じで逝ったところが救いでしたね。ノラが、編集者とともに彼女の墓参りをしながら、編集者に「彼女の人生でも書いてみたら?」と言われてはいた「本当の人生ですか?それとも彼女の願望の人生ですか?」(要旨。見直してないので正確には別の言い方だったと思う)と問い返す最後のセリフも面白かった。
でも、最初の方で、処女作を持ち込んだ編集者にタンカ切って、本当は落ち込みながら汽車に乗って帰ろうとした時、追ってきた編集者に向かうや表情を一変させ、あえて高飛車な態度で対応する主人公は実に立派でしたよ。こういう気性でなければ、いくら珍しい動物(ゲテもの)でも、ノラや編集者ら、英国上流階級の人々の心は掴めなかったでしょう。
エンジェル [DVD]
¥2,950 ¥2,950 税込
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フォーマット | 色, ドルビー, ワイドスクリーン |
コントリビュータ | フランソワ・オゾン, ロモーラ・ガライ, サム・ニール, ルーシー・ラッセル, マイケル・ファスベンダー, シャーロット・ランプリング |
言語 | 英語, 日本語 |
稼働時間 | 1 時間 59 分 |
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登録情報
- アスペクト比 : 2.35:1
- メーカーにより製造中止になりました : いいえ
- 言語 : 英語, 日本語
- 梱包サイズ : 18.03 x 13.76 x 1.48 cm; 83.16 g
- EAN : 4988013524248
- 監督 : フランソワ・オゾン
- メディア形式 : 色, ドルビー, ワイドスクリーン
- 時間 : 1 時間 59 分
- 発売日 : 2008/7/2
- 出演 : ロモーラ・ガライ, サム・ニール, シャーロット・ランプリング, ルーシー・ラッセル, マイケル・ファスベンダー
- 字幕: : 日本語
- 言語 : 英語 (Dolby Digital 5.1), 日本語 (Dolby Digital 5.1)
- 販売元 : ショウゲート
- ASIN : B0017YZOJU
- ディスク枚数 : 1
- Amazon 売れ筋ランキング: - 139,737位DVD (DVDの売れ筋ランキングを見る)
- - 2,480位外国のラブロマンス映画
- - 13,567位外国のドラマ映画
- カスタマーレビュー:
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上位レビュー、対象国: 日本
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2020年9月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2013年5月13日に日本でレビュー済み
先に予告編で見ていたのとはだいぶ印象が違いました。なんせ予告編では、保守的な20世紀初頭のお話なのに、女性が裸で椅子に座って小説を執筆する様子が出てくるものだから(笑)またどんなスキャンダラスな話かと思っていたら、夢を見て、現実を直視することを拒否した少女の話でした。
本名アンジェリカ、呼び名はエンジェル。父親はすでになく、母親が小さな食料品店をやっていて、どうにか食べていける母子家庭の少女。勉強には興味がない、夢は小説家になること、自分はすばらしい才能を持っているのだと信じて疑わない、人に聞かれれば、自分は実は貴族の高貴な血を引いていると吹聴し、お金持ちの家で召使をやっているおばさんが就職の話を持ってきても、「召使なんか!」と傲慢で見下すような態度を取る、最初はなんて傲慢でいやなやつなんだろうと思いました。
ところが出版社に送った原稿が本当に出版されることになります。この出版主を演じるサム・ニールがとても渋くていいです。世間知らずで無知で傲慢で無作法で本当に感じの悪い少女、でも夢を実現できると信じきっているキラキラした目に、たぶんこの出版主は惚れてしまったんだと思います。後になって、それをしっかり見透かしていたことがわかる妻の役は、あの大女優シャーロット・ランプリングが貫禄たっぷりに演じています。
本が売れお金が入ってきて、服装もヘアスタイルもセンスがよくなり、みるみる間にきれいになっていくエンジェルには惚れ惚れします。伯母が召使として働いていた邸宅パラダイスも購入、そんなある日、彼女は美貌の売れない画家に一目ぼれしてしまいます・・・。
ハーレクインのような夢見る小説を書き続け、お金持ちになって小説のような大恋愛をするのはきっと彼女の夢だったのでしょう。それにぴったりのハンサムな男性が目の前にあらわれたのです。まわりの目も気にせず彼に近づき、自分からプロポーズする彼女は、その瞬間、本当に生き生きとして現代的でかわいらしいです。新婚生活も始まり、まさに幸福の絶頂のエンジェル。けれど彼の暗い色調の絵は、結局世間には受け入れられず売れません。エンジェルは彼に惚れたけれど、彼の絵に惚れたわけではなく、もうちょっと明るい絵を描けばいいのにと迫るあたりから・・だんだん夫婦関係もおかしくなってきます・・・。
最初、彼女を見てイメージしたのはなぜか松田聖子とマドンナでした(笑)。エンジェルのセリフに「信じていれば夢は必ずかなう。」というのがありますが、マドンナの言葉にも「強く望めばそれは本当にかなうのよ。」というものがありました。ただ、松田聖子、マドンナとエンジェルの違いは、前者がしたたかに現実をみつめて、自分を時流に適応させていったのに対して、エンジェルは最後まで現実を直視することを拒否し、夢見る少女をやめることができなかったということでしょう。
英国が大戦に参戦したのに、何もしないで見ているわけにはいかないと、戦争に行く決心をした夫を、彼女はただ自分の幸せな世界を壊す許せない行為だとしか見ることができません。貧しい家庭に生まれた惨めさを打ち消すことから始まって、とことん彼女は、自分が理想とする世界以外にはまったく興味がなかったように見えます。小説も、まわりの人々も夫も、所詮、彼女にとってはその世界の中で、彼女が望む役を演じる役者のようなものでしかなかったのかもしれません・・。
また、背景になる当時の建物や室内装飾、エンジェルが身にまとうファッションも素晴らしく、楽しめます。原作はエリザベス・テイラーという名の1900年代前半のイギリス女流作家。小説本も手に入るようです。原作も読んでみようと思います。
本名アンジェリカ、呼び名はエンジェル。父親はすでになく、母親が小さな食料品店をやっていて、どうにか食べていける母子家庭の少女。勉強には興味がない、夢は小説家になること、自分はすばらしい才能を持っているのだと信じて疑わない、人に聞かれれば、自分は実は貴族の高貴な血を引いていると吹聴し、お金持ちの家で召使をやっているおばさんが就職の話を持ってきても、「召使なんか!」と傲慢で見下すような態度を取る、最初はなんて傲慢でいやなやつなんだろうと思いました。
ところが出版社に送った原稿が本当に出版されることになります。この出版主を演じるサム・ニールがとても渋くていいです。世間知らずで無知で傲慢で無作法で本当に感じの悪い少女、でも夢を実現できると信じきっているキラキラした目に、たぶんこの出版主は惚れてしまったんだと思います。後になって、それをしっかり見透かしていたことがわかる妻の役は、あの大女優シャーロット・ランプリングが貫禄たっぷりに演じています。
本が売れお金が入ってきて、服装もヘアスタイルもセンスがよくなり、みるみる間にきれいになっていくエンジェルには惚れ惚れします。伯母が召使として働いていた邸宅パラダイスも購入、そんなある日、彼女は美貌の売れない画家に一目ぼれしてしまいます・・・。
ハーレクインのような夢見る小説を書き続け、お金持ちになって小説のような大恋愛をするのはきっと彼女の夢だったのでしょう。それにぴったりのハンサムな男性が目の前にあらわれたのです。まわりの目も気にせず彼に近づき、自分からプロポーズする彼女は、その瞬間、本当に生き生きとして現代的でかわいらしいです。新婚生活も始まり、まさに幸福の絶頂のエンジェル。けれど彼の暗い色調の絵は、結局世間には受け入れられず売れません。エンジェルは彼に惚れたけれど、彼の絵に惚れたわけではなく、もうちょっと明るい絵を描けばいいのにと迫るあたりから・・だんだん夫婦関係もおかしくなってきます・・・。
最初、彼女を見てイメージしたのはなぜか松田聖子とマドンナでした(笑)。エンジェルのセリフに「信じていれば夢は必ずかなう。」というのがありますが、マドンナの言葉にも「強く望めばそれは本当にかなうのよ。」というものがありました。ただ、松田聖子、マドンナとエンジェルの違いは、前者がしたたかに現実をみつめて、自分を時流に適応させていったのに対して、エンジェルは最後まで現実を直視することを拒否し、夢見る少女をやめることができなかったということでしょう。
英国が大戦に参戦したのに、何もしないで見ているわけにはいかないと、戦争に行く決心をした夫を、彼女はただ自分の幸せな世界を壊す許せない行為だとしか見ることができません。貧しい家庭に生まれた惨めさを打ち消すことから始まって、とことん彼女は、自分が理想とする世界以外にはまったく興味がなかったように見えます。小説も、まわりの人々も夫も、所詮、彼女にとってはその世界の中で、彼女が望む役を演じる役者のようなものでしかなかったのかもしれません・・。
また、背景になる当時の建物や室内装飾、エンジェルが身にまとうファッションも素晴らしく、楽しめます。原作はエリザベス・テイラーという名の1900年代前半のイギリス女流作家。小説本も手に入るようです。原作も読んでみようと思います。
2020年11月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
知能の低い的hずれにしかものを見れない女が、時流に乗ってしまい、大衆はともかく周囲の価値ある人をダメにし続けた話。
今も、よく起こっていることなんだろうな!
最後の方のショーンエバンスがちょこっと出演していたので、星一つにした。
今も、よく起こっていることなんだろうな!
最後の方のショーンエバンスがちょこっと出演していたので、星一つにした。
2009年8月26日に日本でレビュー済み
舞台は1900年代初頭のイギリスで、クラッシックな衣装や建物が
ふんだんに使われ、大時代劇的メロドラマの趣きがあります。
主人公のエンジェルは、少女の頃から有名な作家になることを
夢見る、というよりも、疑うことのない自信を持っていた。
見栄っ張りで傲慢、天衣無縫でエキセントリックな性格は
周囲の人々を振り回す。
自分を特別な人間だと思っていて、かなりの自己中ではあるけど、
いつも自分に正直でどこか無垢なところもあり、憎めない魅力的を
放っていた。
平凡に収まりきらない生き方は、傍で見てる分には面白い。
核となる人間関係は、エンジェルを崇拝するノラと、その弟エスメ。
エンジェルはエスメに一目惚れしてしまい、結婚まで漕ぎ着ける
ものの、その愛情は生涯を通して一方通行だった。
エンジェルの美しい外見と激しい性格は、『風とともに去りぬ』の
スカーレット・オハラを思い出させる。 そうなるとエスメはアシュレかな。
姉ノラの、あまりに献身的にエンジェルに尽くす姿は同性愛傾向を
感じさせ、豪邸に住む3人の三角関係は緊張感をはらんでいた。
売れない画家だったエスメは、女たらしの不実な男だったけど
自分の才能に見切りをつけ、妻エンジェルに養われるのは
辛かったろう。
全てを手に入れ、一時は人生の頂点を極めたものの、だんだんと
自分の思い通りには行かなくなり、破滅へ進んでいく。
ずっと自分で作り上げた虚構の世界に生きてきたエンジェルが
最期のシーンで初めて現実を受け入れる。
その姿が哀れで愛しく、最後まで高飛車なお姫様でいさせて
あげたかったと思った。
ふんだんに使われ、大時代劇的メロドラマの趣きがあります。
主人公のエンジェルは、少女の頃から有名な作家になることを
夢見る、というよりも、疑うことのない自信を持っていた。
見栄っ張りで傲慢、天衣無縫でエキセントリックな性格は
周囲の人々を振り回す。
自分を特別な人間だと思っていて、かなりの自己中ではあるけど、
いつも自分に正直でどこか無垢なところもあり、憎めない魅力的を
放っていた。
平凡に収まりきらない生き方は、傍で見てる分には面白い。
核となる人間関係は、エンジェルを崇拝するノラと、その弟エスメ。
エンジェルはエスメに一目惚れしてしまい、結婚まで漕ぎ着ける
ものの、その愛情は生涯を通して一方通行だった。
エンジェルの美しい外見と激しい性格は、『風とともに去りぬ』の
スカーレット・オハラを思い出させる。 そうなるとエスメはアシュレかな。
姉ノラの、あまりに献身的にエンジェルに尽くす姿は同性愛傾向を
感じさせ、豪邸に住む3人の三角関係は緊張感をはらんでいた。
売れない画家だったエスメは、女たらしの不実な男だったけど
自分の才能に見切りをつけ、妻エンジェルに養われるのは
辛かったろう。
全てを手に入れ、一時は人生の頂点を極めたものの、だんだんと
自分の思い通りには行かなくなり、破滅へ進んでいく。
ずっと自分で作り上げた虚構の世界に生きてきたエンジェルが
最期のシーンで初めて現実を受け入れる。
その姿が哀れで愛しく、最後まで高飛車なお姫様でいさせて
あげたかったと思った。