主人公を含め本作の主要人物に共通するのは「思春期失調症」に共通する「生きづらさ」で、それらをどのように克服して行くのか?、が本作の隠れたテーマであると思う。これを3パターンの類型に分け、各々が解決法を見いだして行く 。あえか編を例にすれば、主人公は複雑な家庭環境とそれに対する過剰適応により「見えにくい生きづらさ」を持つのに対し、あえかはイジメという「見えやすい生きづらさ」を持つ、その過程を過度に強調するのでは無く(演出には多少やり過ぎの部分もあるが...)プレーヤー側に自然に理解させるように作られている。弥津紀編は「見えにくい生きづらさ」に明日が見えず死に怯える者が刹那的に生き急ぐ姿。そして本作の中心「クスリ」がテーマである「ねこ子」編は「薬物依存症は病気であり、治療すれば回復する」ということを提示してこの病気に対する偏見を取り除いているだけで無く、現在の治療において最終目標となる「回復と成長」についても踏み込んでいる。2005年の作品であるので、現代の見解とは異なる部分もあるが、当時としてはこの問題にかなり真面目に向かい合った良作であると思う。このように隠れたテーマが重いので、本作のファンタスティックな雰囲気は良い意味での意図的な演出であると思う。
淡い色彩の作画や、BGMも何気に良い。