だってあの時はそうするのがいいと思ったんだもん、しょうがないじゃん、という言い訳を延々としている話。
実直、勤勉が盲従を産む。しかし、一縷の希望がもたらされるのもそれ故にか。
ハルキムラカミは乾いて冷たいがカズオイシグロはしっとりとほの暖かい。
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日の名残り (ハヤカワepi文庫) Kindle版
短い旅に出た老執事が、美しい田園風景のなか古き佳き時代を回想する。長年仕えた卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々……。遠い思い出は輝きながら胸のなかで生き続ける。失われゆく伝統的英国を描く英国最高の文学賞、ブッカー賞受賞作。
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2001/4/30
- ファイルサイズ809 KB
- 販売: Amazon Services International LLC
- Kindle 電子書籍リーダーFire タブレットKindle 無料読書アプリ
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登録情報
- ASIN : B009DEMAKM
- 出版社 : 早川書房 (2001/4/30)
- 発売日 : 2001/4/30
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 809 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 306ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 12,518位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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イメージ付きのレビュー
5 星
100人が100通りの想像で語り続けられる
大英帝国の凋落とも重なる、かつて貴族邸宅を仕切った執事の思い込みたっぷり独白。後からみれば不器用な生き方で損したかもだが、実は夕日が1番いいのだし元気出そう。私が以前自分の車で訪ねた田園風景も描かれていて懐かしい。訳者あとがきに「国際関係に携わってきたことをモスクムの村人に自慢するスティーブンスがスエズ危機には一言も触れていない。それはなぜか...」とある。だってスエズ危機は1956年10月で、この独白は夏って書いてあるし(笑)。大英帝国の栄光の余韻を語れるぎりぎりの時期にセットしたのでしょう。全体を通して、読み手の数だけ似て非なる感想がでてくるように、非常に巧妙に何通りにも読めるように書かれています。6日間の旅の5日目の記載がなかったり、このあとどうなるのだろうという部分に読者の想像をたくましくさせ、そこで楽しめるようになっているように思います。主人公の旅のルートをイギリスの地図上でなぞってみました(別添)。Stevens が Miss Kenton に再会したCornwall の Little Compton にある Rose Garden Hotel というのが本当はどこなのかわかりません。映画では、そこのところは、Cornwallではない別の美しいロケーションになっています。
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上位レビュー、対象国: 日本
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2023年12月12日に日本でレビュー済み
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2024年3月19日に日本でレビュー済み
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今日、地球上で英語で書く作家は多い。大英帝国の遺産である。カズオ・イシグロ氏の本書は、言わば大英帝国の『斜陽』であって、イシグロ氏は英語文学圏の太宰治なのであろう。執事{バトラー}を通して語られる大英帝国の斜陽はいみじくも『日の名残り』と題される。因みに、執事{バトラー}とは白人奴隷のトップとして貴族邸の家政を統括する立場にあった。『風と共に去りぬ』の主人公はレッド・バトラー、あの映画にあった教会は、鐘を打ち鳴らす少年黒人奴隷の妙技からしてロシア正教の教会だったと思う。
2024年5月5日に日本でレビュー済み
本書はいろいろな読み方ができる優れた小説だ。ハーバード・ビジネススクールでは本書を推薦図書に入れている。主人公は執事として頂点を極めながら、それゆえに私生活では多くのものを犠牲にしていく。「プロの職業人として生涯をまっとうするとはどういうことなのか。正解はないから自分で考えろ。」そういう趣旨なのだ。
わたしはあえて政治小説としての一面を評価したい。日本人は源氏物語の伝統があるためか、人間の素直な心情をつづった話を好み、政治小説を嫌う傾向がある。しかし著者は明らかに西洋人として教育を受けていて、他の日本の作家にはない素質を持っている。本書に政治的メッセージを密かに忍び込ませることに成功しているように思われる。
主人公が仕えたダーリントン卿は、英国の伝統的教育を受けた高潔な紳士である。彼は親交のあったドイツの貴族が、第一次大戦後、破産して自殺したことに心を痛め、ドイツとの協力関係を築くことに尽力する。彼の善意に疑う余地はない。しかし「地獄への道は善意で舗装されている」という言葉のとおり、彼のやろうとしたことは売国的行為として非難を浴び、社会的に抹殺される。主人公は自らの政治的意見を言うことはなく、ひたすら主人を信じて仕えようとする。まるで主君に忠義を尽くす武士を思わせる。
わたしはどうしても現代の国際情勢と重ね合わせてしまう。中国はコロナやウクライナ戦争による世界情勢の混乱を絶好のチャンスと捉え、尖閣諸島に侵入して、どうやら沖縄をターゲットにしている様子。中国人は一度目標を決めたら、何十年でもチャンスが来るまでじっと待つことができる民族である。「日中友好」を信じて孔子学院の設置に尽力し、留学生を援助してきた日本の教育者たちの善意に疑う余地はあるまい。彼らのやってきたことが仇とならず、豊かな実を結ぶことを祈りたい。
わたしはあえて政治小説としての一面を評価したい。日本人は源氏物語の伝統があるためか、人間の素直な心情をつづった話を好み、政治小説を嫌う傾向がある。しかし著者は明らかに西洋人として教育を受けていて、他の日本の作家にはない素質を持っている。本書に政治的メッセージを密かに忍び込ませることに成功しているように思われる。
主人公が仕えたダーリントン卿は、英国の伝統的教育を受けた高潔な紳士である。彼は親交のあったドイツの貴族が、第一次大戦後、破産して自殺したことに心を痛め、ドイツとの協力関係を築くことに尽力する。彼の善意に疑う余地はない。しかし「地獄への道は善意で舗装されている」という言葉のとおり、彼のやろうとしたことは売国的行為として非難を浴び、社会的に抹殺される。主人公は自らの政治的意見を言うことはなく、ひたすら主人を信じて仕えようとする。まるで主君に忠義を尽くす武士を思わせる。
わたしはどうしても現代の国際情勢と重ね合わせてしまう。中国はコロナやウクライナ戦争による世界情勢の混乱を絶好のチャンスと捉え、尖閣諸島に侵入して、どうやら沖縄をターゲットにしている様子。中国人は一度目標を決めたら、何十年でもチャンスが来るまでじっと待つことができる民族である。「日中友好」を信じて孔子学院の設置に尽力し、留学生を援助してきた日本の教育者たちの善意に疑う余地はあるまい。彼らのやってきたことが仇とならず、豊かな実を結ぶことを祈りたい。
2023年12月29日に日本でレビュー済み
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「ダウントン・アビー 」を観て、イギリスの貴族と家事使用人の関係に興味を持ち、執事のひとり語りによるカズオ・イシグロの『日の名残り The Remains of the Day』を読んでみた。
Wikipediaによると家事使用人の本質はリスペクタビリティとスノビズムらしい。つまり、社会的地位と俗物根性。
本作を読み進めるなかで、原題の「the day」がいつなのか気になって仕方がなかったが、複数形なら執事としてダーリントン卿に仕えた日々となりスッキリするのだが。
Wikipediaによると家事使用人の本質はリスペクタビリティとスノビズムらしい。つまり、社会的地位と俗物根性。
本作を読み進めるなかで、原題の「the day」がいつなのか気になって仕方がなかったが、複数形なら執事としてダーリントン卿に仕えた日々となりスッキリするのだが。
2023年11月7日に日本でレビュー済み
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今頃になって読んでみました。実は私は、村上小説を何度読んでも途中で挫折していたので、実際にノーベル賞を受賞したイシグロ氏の小説でも同じく挫折したら、これはもう自分の読解力や感性の無さが原因だと判断するしかないと思っていました。
と思って恐る恐る本書を読み始めると、もう止まりません。私が村上小説で挫折するのは、男女のとりとめのない会話がだらだら続く箇所なのですが、本書にはまずこれがありません。まだ読了していませんが、とりあえずスラスラ読めるのが嬉しいです。
スラスラ読めるのは、土屋政雄氏による見事な翻訳のお陰でもあります。原文を読むと、平易な英文なので読みやすいですが、これをいかにも老執事が話すような語り口で翻訳したのは、もう名人芸としか言いようがありません。この日本語版はまさに、イシグロ氏と土屋氏の共同作業の賜物です。
と思って恐る恐る本書を読み始めると、もう止まりません。私が村上小説で挫折するのは、男女のとりとめのない会話がだらだら続く箇所なのですが、本書にはまずこれがありません。まだ読了していませんが、とりあえずスラスラ読めるのが嬉しいです。
スラスラ読めるのは、土屋政雄氏による見事な翻訳のお陰でもあります。原文を読むと、平易な英文なので読みやすいですが、これをいかにも老執事が話すような語り口で翻訳したのは、もう名人芸としか言いようがありません。この日本語版はまさに、イシグロ氏と土屋氏の共同作業の賜物です。
2023年9月9日に日本でレビュー済み
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生きるは、黒沢の映画をどうアレンジするのか、気にしながら観て一気にファンになった。
この映画はまだ見ていないが、ぜひ観てみたい、そう思わせる小説だった。
この映画はまだ見ていないが、ぜひ観てみたい、そう思わせる小説だった。
2023年8月28日に日本でレビュー済み
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何かで紹介をされてて興味を持ち購入
気分的に真夏の今、読む感じではないと思い、秋になったらじっくり読みたいと思います
楽しみです
気分的に真夏の今、読む感じではないと思い、秋になったらじっくり読みたいと思います
楽しみです
2023年5月24日に日本でレビュー済み
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自信をもって定年退職された方には、是非読んで頂きたいと思います。
主人公は「理想の執事」たる事をひたすらめざします。
人の「品格とは」なんだ!「偉大さとは」…と、極めて有能で忠実な「執事」であるが為
人生に悩み、心を押し殺し、そして老いて行きます。
そして、旅の行き着いた先で「人生とは」いかにあるべきかとの「キーワード」を見つけます。
この文庫本を読み、DVDを買い、単行本の「ノーベル賞記念版」も買ってしまいました。
主人公は「理想の執事」たる事をひたすらめざします。
人の「品格とは」なんだ!「偉大さとは」…と、極めて有能で忠実な「執事」であるが為
人生に悩み、心を押し殺し、そして老いて行きます。
そして、旅の行き着いた先で「人生とは」いかにあるべきかとの「キーワード」を見つけます。
この文庫本を読み、DVDを買い、単行本の「ノーベル賞記念版」も買ってしまいました。