―― 井口監督はこれまでもホラー作品をたくさん手がけられていますが、今回『怪談新耳袋 異形』では、どのようなホラー作品を目指されたのでしょうか?
井口:やっぱり、『リング』(1998年/中田秀夫監督)や『呪怨』(オリジナルビデオ版1999年・劇場版2003年/清水崇監督)のような作品があって、日本で“Jホラー”と呼ばれるものがブームとなってから10何年経っていて「怪談新耳袋」も今年で10周年らしいんですよ。だから世の中でJホラーというものはだいたい出尽くしたと思われている中で、ちょっと過剰な作品をやってみたいと思ったんです。いわゆるJホラーというと、幽霊はピントがぼけて画面の隅にチラリと心霊写真のように映らなければならないとか、幽霊は近づいてきても人に直接危害は加えないとか、いつの間にかできたルールみたいなものを1回壊したいというのがあったんです。
―― 今回の『異形』は、いままで日本のホラーで主流となってきたような幽霊や怪奇現象とは種類の違う“怖さ”ですね。
井口:そうなんですよ。たとえば第2話の「赤いひと」には、いわゆるモンスターのようにも見えるキャラクターが出てくるんです。実は原作の「新耳袋」にはそういう話がたくさんあるんですけど、そういう妖怪のような“もの”をストレートに着ぐるみを使って表現したり、幽霊が出てくるときもクローズアップで映したりとか、表現として大胆に行きたいなと思っていました。だから、自分の中ではどの話も過剰さみたいなものを意識して作った感じですね。第1話の「おさよ」でしたら女性のお化けが出てくるんですけど、そのお化けがひとり出てくるだけでは終わらないというような「一粒で2度おいしい」感ですね(笑)。そういうものを出したいなとすごく思っていました。