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「コントラクトキラー」（1990年）
カウリスマキにとっての初の海外製作作品で、ロンドンのイーストエンドが舞台。カウリスマキに「自分が俳優として出演していた時には彼の真似をしていた」と言わせしめたほどのジャン＝ピエール・レオのために描きおろした作品です。
アンリ（ジャン＝ピエール・レオ）は長年勤めた水道局をクビになり、人生に絶望し、自殺を試みるもうまくいかず、思い余ってプロの雇われ殺し屋（コントラクト・キラー）に自分を殺してくれるよう依頼します。ところがその直後、アンリは花売り娘のマーガレット（マージ・クラーク）と恋に落ち、慌ててキャンセルしようとするのですが・・・。
カウリスマキ本人による選曲は主に50年代のR&Bで、相変わらず選曲のセンスは最高です。
カウリスマキ自身もカメオ出演（道端で煙草をねだる髭面の男）し、ハンバーガーショップのマスターはセルジュ・レジアニ、殺し屋を演じるのはケネス・コリー、バーでエルヴィスの写真をバックに歌うのはジョー・ストラマーなどキャストの顔ぶれは豪華です。
この作品も極端に台詞が少ないのですが、アンリが殺し屋を頼みに行った時のチンピラ二人との会話や、殺し屋と医者のやり取り、最後のアンリと殺し屋の間の会話など、何気なく語られる一言の味わい深さはしみじみと心に突き刺さります。
映像的には冷たさと温かさの混じった、鮮やかな原色のコントラストが絶品です。
「白い花びら」（1999年）
サイレントの白黒映画によって人間の悲劇性・喜劇性・愚かさを濃密に描き出しています。
体に障害のある人の好い夫（サカリ・クオスマネン）とマルヤ（カティ・オウティネン）は田舎の村でキャベツを栽培する夫婦。そこに通りすがりの都会から来た不良中年男（アンドレ・ウィルム）が現れてマルヤを誘惑し、マルヤはどんどん派手に変わっていきます。そして都会の秘密クラブで働かされ、そこから逃げ出す途中、不良中年男の赤ん坊を生みます。そしてマルヤの夫は復讐のために斧を持って秘密クラブを襲います。
台詞に頼らない役者の演技と表情が素晴らしいです。全編に流れるBGMが若干違和感がありますが、それもカウリスマキの狙いなのだと思います。
またマルヤの夫が斧を持ってクラブの中を歩き回って次々と人を殺す間、周りの人間たちが全くの無関心なのがさらに不穏な雰囲気を漂わせます。
男に騙されて子供を産むカティ・オウティネンの救いの無い哀しさは『マッチ工場の少女』（1990年）に重なりますが、それまでたとえ平凡であっても夫婦仲の良かった幸せな生活が無残に壊れてしまうが故に、本作の方がより悲劇性は強いと思います。
ちなみにエリナ・サロは今回秘密クラブの歌手役で登場しています。
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