説明にはありませんし、パッケージにも書いてありませんが、ディスクを再生すると字幕選択の中に日本語がありました。
開封するときに「しまった!」と思いましたが、日本語字幕があってホッとしました。
バイエルン国立歌劇場管弦楽団&合唱団、ズービン・メータ(指揮)ですから、演奏に不満はありません。
エリーザベト(純愛)とヴェーヌス(性愛)の間で苦しむタンホイザーというテーマですが、再生してみると、
前奏曲では前衛芸術風の演出で、地面をカクカクうごく異形の者や、乳モロだしの女性がゆらゆらと舞台を横切り、
ついにはワニまで出て来ました。 あちゃー、これは最後まで見ることができるだろうか?と心配しました。
しかし、それは官能の愛の女神のヴェーヌスの居る地中の居城、それらをメタファーとして捉えられないこともなく、
ヴェーヌスベルクを出たあとの演出では押さえたトーンで展開していきます。 あーよかった。
騎士達と出会うシーンでは、曇天のいまにも嵐が来そうな背景と荒涼としたステージが雰囲気を出しています。
時代背景やストーリー展開に忠実に演出すれば、それはそれでちょっと陳腐になるかもしれません。
そこで、演者のコスチュームや舞台装置だけみてもなんの前知識にも繋がらない、こうした演出が試みられているのでしょうか。
本当はワグナーがいた頃の演出をベースに、それを洗練させたようなものを期待していたので、その点はちょっと幻滅です。
以前テレビで見たバイエルンでの舞台では、扇風機工場の設定でした。これは最後まで違和感が消えることなく残念な舞台でした。
オペラが盛んだった時代には、日本でも歌舞伎が人気を博していました。
同じくらい年月が経って、日本でも歌舞伎は一定の人気がありますが、江戸時代の脚本を現代劇風だとか、前衛芸術風に演出することはありません。
昨年、歌舞伎役者が漫画ワンピースという現代の脚本を歌舞伎の演出に乗せた舞台が話題を呼びましたが、それはアリだと思います。
オーソドックスな演出をそのままに、歌手や指揮者・オーケストラで勝負するようなオペラであってくれたら、と願っています。