ストーリーにこだわって観ても余り意味が無いと思われる。
妻に動機不明な自殺をされて、日常生活で重要な、言葉の意味性や人間の出自、名前などを否定する、出来事だけの世界に生きようとする男。その男に心惹かれて、恋人(結婚も時間の問題かという)がいながら通うようになる女。
しかし逢瀬を重ねるに従って、男は日常生活への回帰を願うようになって行く。男は自身の来歴や職業を女に伝えて、日常的な関係を迫るが、その事を明視してしまった女にとっては最早愛の対象とはならない。男を銃撃する形で決着を付ける。
と言うのが、基本的な構造だと私は感じた。その間にパリの風景やガトー・バルビエリのテナー・サックス(全体的なサウンドの編曲はオリバー・ネルソンが担当している。この事は今回初めて知った)が雰囲気を盛り上げている。ジャズ・ファンの私には、壁にシドニー・ベシエの写真が飾られているのに驚かされた。
未だ、家庭用ビデオも普及していない時代の作品でエロス面で評判を呼んだが、上記の構造が捉えられないと、失望する可能性が高いだろう。